チンキンサンバ

体はビールでできている

ウォルター少年と夏の休日

小学生の頃、休日に市民会館で上映される少し古い映画を祖父母に連れられて観に行くことがあった。

 

昔のことなので、どんな映画を観たかは大体忘れてしまって、ただそういうことがあったという記憶が残るばかりではあるのだが、その中でも強烈に心を打たれた作品がある。

 

それが「ウォルター少年と夏の休日」だ。

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2003年に制作されたアメリカ映画で、ウォルター少年がそれまで会ったことも、存在を知ることもなかった大叔父さん2人の家に預けられ、そこで過ごしていく中での出来事を描いたヒューマンストーリー。

 

この大叔父さん2人というのが、かなりの頑固者で偏屈な性格の持ち主なのだが、主人公ウォルター少年と一緒に生活していくうちに心を通わせ、男として、人として何が大事かを教えてくれる。

 

それからというもの、TV放映やレンタルで幾度となく繰り返し観てきたが、30歳になった今、午後のロードショーでやはり心を打たれたのでこうして文字に起こしている。

 

この作品の良いところは、人情味に溢れるストーリーはもちろんだが、数々の冒険と情熱をもって生きてきた2人の大叔父さんが、人生における大事なことを小難しい理屈抜きにして教えてくれるところにある。

 

例えば夜の湖でハブ大叔父さんが自身の昔話を交えて、迷えるウォルター少年にこんな話をする。

 

「本当かそうでないかは関係ない。何かを信じたいと思ったら信じろ。」

 

「大事なのは、それが本当かどうかじゃなく、そうだと信じて生きていくことだ。」

 

「そう信じるだけの価値はある。どうだ、わかったか。」

 

信じたいものを信じろ、だがそれが真実でなかったとしても後悔しないだけの覚悟をもて、と言われている気がする。

 

単に都合の良い部分だけを盲信して、楽観的に捉えるのではなく、自分の心に従って悔いなく生きろというメッセージには前向きな気持ちにさせられる。

 

また、この大叔父2人はいくつになってもやりたいことに全力なのも気持ちがいい。

 

中古のライオンを飼ってみたり、湖で釣り代わりに銃で魚を撃ったり、説教と称して若者と乱闘してみたり。

 

最後は無免許で小型飛行機を乗り回し、宙返りした状態で納屋を飛び抜けようとして、案の定失敗して2人とも即死。

 

そんな訃報が届いた時ですら「2人らしいな」と微笑む、大人に成長したウォルター少年。

 

いつまでも繰り返し観たい作品だと思う。